フィンランドはヨーロッパの中でもデジタル化が非常に進んでいる国であり、市民のデジタルスキルも世界トップクラスに位置しています。例えば欧州委員会が発表しているデジタル経済及び社会指数(DESI)においてフィンランドを含む北欧諸国は常に上位にランクインしています。2022年に発表されたDESIではフィンランドは、2位のデンマークと大差はないものの、1位に位置しています。これは政府のデジタルサービスの普及度、市民のデジタルスキル、デジタル技術の充実度など、多角的な要素が評価されているためです。
そんなデジタル社会フィンランドについて、実際便利だと感じることや、どういったときに不便さを感じるのか、自らの経験をもとにに綴っていきたいと思います。あくまでも主観で感じていることをメインにご紹介したいので、公的サービスのオンラインシステムなど制度については補足程度の簡単な説明のみ追加しています。気になる方は詳しく書かれているブログ記事がたくさんあるのでそちらを参考にしていただければと思います。
フィンランドでは、多くの行政手続きをオンラインで簡単に完了することができます。たとえば下記のようなサービスです。
引っ越しの手続き:住居変更の手続きは役所に足を運ぶことなくオンラインで完結できます。
税金関連の手続き:税務局(Verohallinto)のデジタルサービスを利用して、納税、還付詳細の確認、手続きなどが可能です。
社会保障制度への申請:Kela(フィンランドの社会保障局)を通じて、住居補助や子育て支援などの申請もオンラインで行えます。
いつでもどこでもこれらの公的サービスを利用できることが利便性として挙げられています。ただしこれらの公的サービスをオンライン上で利用をするために必要なものがいくつかあります。これらを取得するととても便利なのですが、自分自身が移住後したは様々な役所や銀行に足を運び列に並んで順番を待つことが多く、社会制度について理解するまで思っていたより時間がかかったことを覚えています。
フィンランドでデジタルサービスを利用して公的手続きを行うために、2つの重要な要素があります。
社会保障番号または個人識別番号(Henkilötunnus)
日本のマイナンバーに相当するもので、フィンランドに住む全ての市民および長期滞在者に発行されます。普段の生活で例えば医療機関への予約等電話での対応の場合に必ず聞かれるので口頭で答えられるよう覚えておくと便利です。
電子認証(Tunnistautuminen)に必要な手段の確保
現在は主に銀行のオンラインバンキングを通した電子認証システムが使われています。銀行で口座を開設する際に、オンラインバンキングの開設と電子認証用のIDやパスワードを発行し社会保障番号を紐づけしてもらう必要があります。
銀行口座を開設する際には、通常パスポートに加えて、フィンランドの住所、在留許可証やIDカードなどの提出が求められます。私はフィンランドで発行されたIDカードを取得する前に銀行口座を開いたため、その際は電子認証を取得できず、IDカードを入手後また銀行に行く必要があり二度手間になってしまいました。書類の取得の順序をあらかじめわかっていれば手間が省けると思うので、事前に調べることをお勧めします。
公的サービスのオンラインサービスへログインする際にIDとパスワードを利用し本人確認ができます。オンラインバンキングが一時利用停止の時間帯はログインができないので、電話番号と紐づけされた電子認証システムとの併用が個人的にはもしものために安心できると感じています。
公的サービスからのメッセージは、Suomi.fiを通して電子的に受け取ること、または郵便で通知を受け取ることができます。しかし、現政府は2026年度から電子的に通知を受け取る国民の数を増やすことを目標に掲げています。そのため、今後ますます紙の郵便物からの脱却が図られることになります。 Suomi.fiを通して通知を受け取る際は、どの機関からメッセージが届いているかという通知のみが届き、実際の内容を確認するにはその機関の公式ウェブサイトにアクセスし、電子認証システムを使ってログインする必要があります。 また、公的サービスを装ったショートメッセージやメールによるフィッシング詐欺が増えていることもあり、Suomi.fiを通じて通知を受けられる仕組みは安全性の面でも優れていると、個人的には感じています。
フィンランドでは、フィンランド語とスウェーデン語が公用語とされており、すべての公共機関のオンラインサービスはこの2つの言語で提供されています。さらに、英語でも多くのサービスが利用可能ですが、すべての公的機関が英語でサービスを提供しているわけではありません。例えば、フィンランドの税務局のサイトは英語でもかなり広い範囲でサポートされていますが、社会保障制度に関する一部のページでは英語対応が限られています。
このように公的サービスの電子化がかなり進んでいるフィンランドでは、デジタル社会において市民が取り残されないよう、さまざまな支援サービスも充実しています。その一つが「デジタルサポート」と呼ばれるもので、図書館や市の窓口などでデジタル機器の使い方や公的サービスへのアクセス方法などを手助けする仕組みです。
デジタルサポートは、フィンランドのデジタル庁が全国のサポート制度の設立やフレームワークの整備を進めてきました。このようなサポートを通して、市民がデジタル社会で困らないよう自立できるよう支援することが目的であり、あくまでも市民に代わってすべてを行うのではなく、サポート役に徹することが重視されています。
デジタルサポートを提供している機関や団体は数多く存在しており、それらについては、現職にも関係しているため、また次のブログで詳しくご紹介できればと思います。
2025 April 26